ひと昔映画日記

素人の映画雑食日記 それこそ我が映画道

フルメタル・ジャケット(1987)

とにかくクール。色んな意味で。
好きか嫌いかで言ったら好きなんです。
嫌な人は嫌だろうと思いますが。

出演者:マシュー・モディン、 アダム・ボールドウィン、 ビンセント・ドノフリオ、 ドレイン・ヘアウッド、 アーリス・ハワード、 リー・アーメイ
収録時間:117分
レンタル開始日:2001-08-23

Story
見事にマッチしたキャスト達がスタンリー・キューブリックの元に勢揃い。殺人者になるべくトレーニングされる非人間的なプロセスを描くベトナム戦争映画。ジョーカー(マシュー・モディーン)、アニマル・マザー(アダム・ボールドウィン)、<デブ>のレナード(ビンセント・ドノフリオ)、エイトボール(ドレイン・ヘアウッド)、カウボーイ(アーリス・ハワード)他、全員が地獄の新兵訓練所に投げ込まれ、情け容赦ない教官ハートマン(リー・アーメイ)に鍛えられる。次々と起こる激しいアクションとストーリー、痛烈なユーモアにあふれた台詞。『フルメタル・ジャケット』は厳しい訓練を終え、舞台となるフエ市を悪夢のどん底に落とし入れた戦争を描いた大ヒット作品。 (詳細はこちら
◎歴代最高の映画500:457位作品

Gyaoで無料放映中と聞き久しぶりに再視聴しました。
殆ど内容も忘れてたし、最初に観た時は監督がキューブリックだった事も知らずに観てた気がします。


戦争物ってとかく美化されやすいジャンルだったりしますけど、その辺はやっぱキューブリックなんでしょうねー。
内容はとことんリアリティを追求しつつ、ドライな印象が強い。
それ故身震いするような場面にも出くわす。
戦場では感傷的になってる暇なんて無い場合もあるんだろうかと、想いを巡らす。
キューブリックはやっぱり絵が良い。
私は、彼の映像に日本庭園なんかと同じような美学を感じます。
一見するとごちゃごちゃしてたり、適当に見えるけど、綿密に計算された彼のセンスによって描き出された映像はほんとにクールだし、背景の使い方がすごく上手だなぁとか素人ですけど思っちゃいました。

そして、音楽の使い方もパンチが効いてます。。
まともに考えるとその場面と合致してないように感じるような音楽だったりするんですが、
それがかえって不気味で強く残ってしまうというか、まんまとやられた感じです。

20年以上も前に作られた映画とは感じないですね。
他の映画もそうだけどキューブリックは時代を超えて訴えてきます。
その辺がこの人のすごいとこだなぁ。。。


この映画は戦争映画であるけれど前半部分が訓練時期、後半部分が戦場ときっちり二部構成に分かれています。
主人公はジョーカーというあだ名を訓練時代に教官からつけられた青年で、
その後、報道部?として戦場へ赴く。
ナレーションもこの青年(役のマシューモディン。。懐かしい)が担当しているし、
主人公なので全編に渡って登場はしますが、メインという印象は薄くあくまでこの映画の案内役のような立ち位置だと感じる。


キューブリックがこの映画を通して伝えたいことが、ジョーカーの半生などではなく戦争そのものであると訴えかけてきているような気がする。


そして、特筆すべきは前半の訓練部分でしょうか。
ボーっと眺めてるだけだと下品なおっさんがわめいているだけの無意味なシーンとして認識してしまいそうですがw
何年か前にドイツの映画でes(エス)という映画が公開されました。
esとはフロイト用語で「無意識層の中心の機能」の意味を表し、1971年にアメリカのスタンフォード大学で実際に行われたスタンフォード監獄実験を元にして作られた映画で、簡単に言っちゃうと一般募集?とかで集められた普通の市民を大学の地下室に作られた模型刑務所に一定期間閉じ込めて、それぞれの人に役割を与え普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、その役割に合わせて行動してしまう事を証明しようとした実験。

んで、当然看守側と犯罪者側に分かれるわけだが、半ばくじ引き同然のルールで二班に役割を分担され、最初は冗談半分で演じていた被験者達が次第に本当に自分が役柄で命じられた立場の人間だと思い始め行動がエスカレートしていくことになる。

と、長々と違う映画の説明をしてしまったが、前半の訓練部分はそれに近い心理効果があるのだろうと思うし、観ていてesを思い出したというわけ。
この映画の真の恐ろしさというか、柱になっているのはそういう部分のような気がしますよね。
これから戦場の前線に出て戦う兵士予備軍にはそういった洗脳に近い教育というのか、教育という名の洗脳というのか、そのくらい耐えられないと現場でなんてやってられませんよってことなんだろうな。

まあ、普通に考えて例えば前日までデスクワークで経理とかやってた人をいきなり戦場に連れて行って、いけ!とっいたところで無理に決まってるわけだし、もちろん肉体的な鍛錬だとか、技術的な訓練もあるでしょうけど、一番は人を殺しても正気を失わない精神を作り上げるところにあの手の訓練学校の存在理由があるのだろうと感じます。
戦場に行く前に正気を失う人が出てきても不思議は無いわけで、それほど過酷なんだということを嫌というほど認識させられます。


しいて言うならオールイギリスロケみたいなので、人工的リアリティってとこですかねw
まぁ、ぶっちゃけ私は気にならないけど。


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総評:☆☆☆☆☆
物語:☆☆☆☆
演出:☆☆☆☆☆
映像:☆☆☆☆☆
音楽:☆☆☆
役者:☆☆☆☆


<ジャンル>
戦争

<オススメ>
鬼才の才能に酔いしれ、触発されたい時
刺激が欲しい時

↓ネタバレ



ラストシーンに関してだって今はああいう見せ方も結構使われたりするけど、
20年前ですよ。。。
それ考えたらやっぱりすごいんですよね。
訓練で正気を失ってしまう訓練生の末路についてだって、20年も昔だったら相当な衝撃だったと思う。
それ考えると、まったく色あせてないというか、むしろ現代を浮き彫りにしてるというか、
手塚治クラスの先見の明だなっつー話ですよ。

嫌悪感を抱く人も多いと思うし、観なきゃ良かったって思う人も多いだろうと思う。
でも、映画って別に娯楽の為だけのもんじゃないから
こういう監督やこういう映画って必要なんだよねって私は思います。
キューブリックやっぱ好きだわ。


余談
劇中ヘリの中からマシンガンをぶっ放している兵士はもともとあの鬼教官役としてオファーが来ていたらしい。
で、映画で教官をやっていた人は本物の元海兵隊で、リアリティを追求する為に指導員として呼ばれていたのが、そのまま起用になったということみたいw

最初の教官役に代役として用意されたのが、あのヘリで乱射する兵士の役だったみたいです。
うっぷんを晴らすかのごとき熱演w
「よく女子供が撃てるな。。。」の問いかけにたして彼が放った衝撃のセリフ。
女子供の方が動きが遅いから撃ちやすい。。。。ってそうじゃなくって!と突っ込みたくなるが、
もちろん質問の真意を理解した上での回答なんだろうけど。
あんやなつほんとにいたら絶対友達になりたくない。。。。