ひと昔映画日記

素人の映画雑食日記 それこそ我が映画道

シド・アンド・ナンシー(1986)

ゲイリーオールドマンの出世作ですな。
10年振りくらいで観てみました。
さすがにリアルタイムでは観てないけど、この映画自体はもう25年位前の作品になるわけだ。

出演者:ゲイリー・オールドマン、 クロエ・ウェブ、 デヴィッド・ヘイマン、 ペリー・ベンソン
収録時間:113分
レンタル開始日:2005-07-27

Story
セックス・ピストルズ」のメンバー、シド・ビシャスとナンシー・スパンゲンの過激で怠惰なラブストーリーを描いた傑作。 (詳細はこちら

内容は全然違うけど、レボリューショナリー・ロードに続く破滅型恋愛物というところですが、とりあえず映像は終始一貫して荒廃している。
下品な表現や映像も多いので、そういうのが苦手な人は観ない方が宜しかろう。


ぱっと見生意気で暴れ者だけど実は気弱で寂しがりでピュアなシドをゲイリーが好演している。
事実、本物のシドはいつも裏ではいじめられていたらしい。
ゲイリーは撮影前シドの実の母親に何度も会いに行き、相当時間をかけて役作りをしたようだ。
その苦労がヒシヒシと伝わってくる痛々しくて切ない青年の姿がリアルに描き出されていた。
相手役の子も負けてない。
ピュアで幼いシドを破滅に導くにふさわしい演技だったと思う。


本気で人を好きになったら、大なり小なりその相手の影響というのを誰しも受けるものだと思う。
その影響を受けるふり幅はその人がどれだけピュアかどうかということに比例していると思うし、シドのように心底ピュアでむき出しだと殊更影響力は大きいと簡単に予測がつく。

だからこそ、どういう相手を選ぶかがその人自身がどうなるかに直接影響してくるのだろう。
そんなシドはナンシーと出会う。
なぜナンシーに惹かれたのか?
自分と同じようにむき出しのまま生きている彼女と共鳴したのだろうか。


良し悪しは別としても本当に素直な二人。
二人揃って仲良くとっても弱いw
威勢は良いが、とても繊細だ。
だけど、この二人は自分達が弱いということ隠さない。
むしろそこを逆手にとって攻撃に転じているようにさえ思える。
攻撃は最大の防御なりとか言うけど、体現してるように見えた。
なぜ、そうしなくちゃいけなかったか。
彼らは鎧を纏っていないから、そうする事でしか自分達を守れなかった。


人並みに大人になると、鎧を身に着けることを覚える。
その鎧が傷つきすぎたりすることから守ってくれるようになったりする。
だけど、その鎧がなければ、誰だってシドやナンシーと変らないのじゃないかと思ったりする。

そんなところに、愚かで愛すべき人間らしさを感じてしまう。
思えば私とて、20歳くらいの頃は限度はあるにせよ今よりはむき出しのままで生きていたのだろうと思う。
言いしえぬ喪失感と共に、真逆の安堵を感じる。
若かりし頃の素直さ純粋さと歳を重ねて得る穏やかさと智慧。
後者の割合が大きくなりすぎるのはそれはそれで寂しい気がしますね。


そんなこんなで私の心には染みる作品なのだ。

但し、シド・アンド・ナンシーの歴史としてはいただけない。
一部事実ではあるが、大部分はフィクションなのであくまでそのつもりで観る必要はある。
とはいっても、特別ピストルズのファンとかいうわけでもないでの、自分にとっては取るに足らない問題ではあるけど。

その他、事情はあるのだろうけど、もうちょっと時間を使って描いて欲しかったかなぁ。
物語の展開が早すぎて少々味わって観るには過酷だった。



※ネタばれあり
有名なごみ溜めでのキスシーンは何度見ても斬新で絵になる。
(日本じゃダサすぎて成立しなさそうだけど。。)



総評:☆☆☆☆☆
物語:☆☆☆☆☆
演出:☆☆☆☆
映像:☆☆☆☆
音楽:☆☆☆
役者:☆☆☆☆☆
製作年:1986

<ジャンル>
切ない恋愛
人生

<お奨めの気分>
大事なものを再認識したい時