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ひと昔映画日記

素人の映画雑食日記 それこそ我が映画道

PERFECT BLUE(1998)

単なるスリラーではない

知人の勧めで鑑賞してみた。

アニメは今まで殆ど観て来なかったのでほぼ知らないに等しい状態だったし、アニメどころか邦画そのものが塚本晋也の作品以外殆ど観てこなかった。

再開してからは、食わず嫌いを辞めたので邦画もハリウッド映画も観るようにしているが。

観終わって、最初に思ったのが「日本の監督にもこんな細かい仕掛けを仕込む人が出てきてるんだなぁ」ってのと「アニメというジャンルに縛り付けておく作品ではないような気がするなぁ」
の二点がまず頭に浮かぶ。
(とは言っても監督さんは最近亡くなったみたいだが)

まったくもって「アニメアニメ」していない。
人物描写にしても、どっかで観たことあるような雰囲気の人物が脇を固める。
主人公の女の子もそれほど売れてないとは言え一応アイドルという設定だが、
そこまで可愛いって感じに描かれてないところが多分リアリティを増している。
この辺は以前に観た、攻殻機動隊なんかともちょっと共通してる感じがしたけど、
いかにも現実的にはありえんだろうというほどの「美男、美女」が登場してしまうと
その時点でその作品は「娯楽アニメ」とししてしか認識できなくなる。
私の中での娯楽アニメというと、アラレちゃんとかサザエさんとか
そういうのと同じ感覚でしかもう観れないってことだ。
それが悪いということじゃない。
ただ、心構えというものがあり、スイッチの種類が違うわけだ。

この作品は、そういうスイッチはOFFにしたまま観る事ができた。


内容が内容だから、嫌悪感を感じる人もいるだろうな。
好き嫌いはかなりはっきり分かれるだろう。

私は、ここ最近はスリラーものが好きだし、トリッキーな展開も好みのうちなので面白かったな。
前半は結構退屈なシーンも多かったけども。

で、この映画観終わってなんか訳わかんないとか、誰が犯人なの?とか、どういう意味なのとか、周りに聞いちゃう人多分いるんだろうな。

そういう類の映画ってことだけど、答えは無い。
というか自分で考えればいいこと。
意見を交換するのと解釈を施してもらうのは意味が違うと思うんだよ。

お互いに語る分には、色んな人の感性を知ることでまた自分も新しい発見ができるし広がりもあっていいなぁとか思う。
だけど、人から「あれはこういう意図で、こういう効果でこういう結論だよ」と
教えてもらって「へぇそうなんだ、すっきりした」で終わらせてはもったいないよ。


そもそもそれが映画の醍醐味だと私は感じてるし、だからキアロスタミとかルコントとかを好んで観てきたのもあった。
私の中には二種類の映画があって、自分の中で「映画」として認識するのはこういった類の作品なんだよね。
観終わった後に余韻も隙間も無い映画は私の中では「娯楽映画」として認識する。
娯楽映画は、観ている間楽しく時間が過ごせれば良いので映像が美しいとか、好きな俳優が出ているとか、音楽がカッコいいとかそういうことで十分なわけ。

だけど、ちゃんと「映画」を観ようとしたときには「娯楽映画」では物足りない。
パズルのピースを誰かが埋めていて、完成するのを隣で観ているようなものだ。
最後に出来上がった絵柄を確認することはできるからお手軽で満足を得ることはできるけど、
自分でピースを埋める方が楽しいし、自分だけのオリジナルの絵柄のピースで埋めるのだって楽しい。


※以降ネタばれ

タイトルのパーフェクトブルーとは対照的に、作品中は赤を強調した絵が多い。
人格やストーリーが折り重なるようにして対比されていることに呼応するかのように、
鮮やかにくっきりと際立つ赤が希望と絶望や現実とバーチャルみたいな相対するもを強調し、
引き立てているかのようだった。
華やかでもあり不気味でもある。


先に、人物描写にリアリティを感じると記載したが、唯一ストーカー(なのか知らんが名前忘れた)っぽい不気味な人物が登場するんだけど、そいつだけが異常に浮いてる。
そいつだけが全然リアルじゃない。

完全にバーチャルな登場人物と妙にリアルな登場人物、そして、リアルなはずなのにリアルじゃないこの男が二つの世界を繋いでいる。

自分が何なにものなのか、考えれば考えるほどに混迷を極める。
女優として撮影しているという設定の作品がまた、リアルと同じようにサイコスリラーものであることも大きい、そこがまたこの話をカオスにしているw

人は真理にたどりつけるのだろうか?
サイコスリラーではあるけど、結局のところこの作品から私が受け取ったものは、
誰しも自分を探し求めて生きているのであるし、その答えなどきっと一生見つからない。
それを探すという過程に意味があるのだと。

そんなことのように思えた。
という意味では単なるサイコで片付けるのもなんか違う気がする。
無所属なのにしっかりと自分の居場所を確保している、どんなジャンルにも属さないような作品という感じがした。
そこがいいじゃない、オリジナリティこそ自分探しのカギでもあるしね。


総評:☆☆☆☆
物語:☆☆☆☆(後半は満点なんだが、やっぱ前半の歌のシーンとか退屈だった。。)
演出:☆☆☆☆☆
映像:☆☆☆
音楽:☆☆☆☆
役者:☆☆☆(声優及びキャラクターということになるが)
制作年:1998


<ジャンル>
サイコスリラー


<お奨めの気分>
精神的に安定していて、自分とは何かを考えてみたい時