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ひと昔映画日記

素人の映画雑食日記 それこそ我が映画道

千年女優(2001)

日本 アニメ ファンタジー ラブロマンス 2000年代 ☆4

ひと味違った映像美

PERFECT BLUEに続く今敏監督の2作品目を拝見してみた。
前作のサイコスリラーとは打って変わって、今度は恋愛モノと来ましたか!
前回と同様に「劇中劇」で観るものをかく乱するあたりは同じようなスタイルといえる。
劇中劇っていうくらいだから、まぁ当然というか主役もまた”女優”。
劇中劇を描きたいが為の必然のごとく。

すごい手が込んでるなぁという印象。
細かいところにまで神経が注がれているの伝わる。
なんかで読んだけど今敏監督自身の言葉で、アニメの場合はどんなものであろうと意識を持って描がかれたものしか存在しないと、確かに当たり前のことのようでもある。
路上に散る枯れ葉一枚、デスクの上の書類の配置や高さ、どれ一つ取ったって「そうしよう」と思って描かれる世界である。
逆に実写の場合は、偶然に移りこむものや意図せず収まるものがあるのもまた然り。
どちらがよいということではない。
どちらにも、良さはあるだろう。
ただそういう違いがあるということで表現できる世界も変ってくるって事なんだろう。

絵は前回よりも数段良い。
背景の影響もあるだろうけど、そこも含めてノスタルジックな雰囲気があの画風にぴったりマッチしてるんだろうな。


※以降ネタばれ
ある女優の人生を彼女の女優としての歩みを引っ掛けながら表現していくという斬新なスタイルだ。
まぁ、この辺は前作でもちらりと見られた趣向なのでなるほどーという感じだったけど、
唸るところっていうのは、なんていうのかね、焦らすのが上手い?

少女時代に通りで偶然にぶつかってしまった絵描きの青年との出会い。
絵描きの青年は活動家でお上からの捕獲対象となっており追われている。
運命を感じた少女は大胆にも彼をかくまう。が、学校に行っている間に追っ手に見つかり戻ったときには彼はもう逃げた後だった。

そして彼からの預かり物である大切なものを開けるための鍵。
前日に彼と語らう中で彼が満州へと向かう事を知っていた少女は、鍵の君を満州に探しに行く目的で手段として女優を選ぶわけだけど、そのリアルな世界から彼女の演じてきた映画の中へとトリップする。

戦国時代から幕末へと、劇中劇の中で時間を駆け上っていき、映画の時代背景が彼女のリアル人生と重なる頃を以って、現実と映画の中を行ったり来たりするようになる。

映画の中ではとにかく「走る」というより「追いかける」いつも追いかけている。
走るたびに、体のどこかに忍ばせてある鍵の音が「チャリ、チャリ」と響く。
彼女がどれだけその鍵を大事にしているかを、その音が知らせてくれる。
そのことを確認するために走らせているのかと思えてくる。

このあたりは一時単調で危険なんだけど、その辺がうまかったなぁ。
そろそろこのパターンも限界なんじゃないのですかー?
と思う頃合いを見計らうかのようにして、切り替わっていくんだよなぁ。

次から次へと退屈しないスリリングで楽しい展開が続くというのはそれはそれで、実は味気ない。
波があるから楽しいのであって、面白いことがずっと続くことは何れそれは退屈となってしまう。

お腹すいて限界だ。。って思ったところにご馳走と来たら不覚であろうと飛びついてしまうわな。。

前作の雰囲気からして「鍵の君」にはきっとあえないだろうなというのは、
すぐに気づいたがよくよく考えてみると、これって王道だったりすんじゃないの?
って。
だけど、そうじゃないように魅せるところがテクニックという感じだったような気がする。

そして今更だけど、「やま(山寺宏一)ちゃん」ってやっぱすごい。
最初に登場した時にすぐにやまちゃんだなってわかるんだよ。
そこまでは、たいしたことじゃない。
特徴があればすぐに気づく声優なんてほかにもたくさんいるわけだし。
やまちゃんがすごいのは、そこじゃない。

かなり売れっ子で色んな役柄をこなしてるし、私自身も他のアニメでも何度もやまちゃんが声を担当する役と出会ってきている。
にもかかわらず、以前観た役のイメージがまったく邪魔してこない。
常にそのときの役としてすんなり受け入れてしまうのだ。

脇役が多いからじゃね?といわれると元も子も無いところだけど。。。。
でも、野沢雅子だったら違う役で出ても多分孫悟空が浮かんでくるだろうし、日郄 のり子なら違う役でも南ちゃんが出てくるだろう。

ま、その辺は何れやまちゃんが主役だというカウボーイビバップを観た後、検証してみればはっきりすることだろう。


話を本題に戻すと、相変わらず所属はよくわからん映画だw
そこがよいところでもあるけど、恋愛ファンタジー?と割り切ってしまうのも違うし、不思議な世界観だ。

ストーリー的にラストが若干見え透いてたところが個人的には少し残念ではあったけど、
映像と演出は一級品だと感じる。
とにかく、この人の作品はアニメだというのを忘れるし、そこはほんとに素晴らしいね。
何れの登場人物もキャラクターという言葉に当てはめて考える事が難しいくらいだから。
主人公の千代子に対して、共感や感情移入するでもなく、こういう人がいても良いと思うよ。
という客観的な視点に立って観る映画というのも悪くないもんだ。


この監督は部品を作る才能はかなり優れていると感じる。
最後に出来上がる完成品については、私の趣向と若干合わない部分もあったけど、それでもこれだけ一流の部品を作れるということだけでも素晴らしい。
いなかったしね、こういう人って日本には。



総評:☆☆☆☆
物語:☆☆☆
演出:☆☆☆☆☆
映像:☆☆☆☆☆
音楽:☆☆☆
役者:☆☆☆
制作年:2001


<お奨めの気分>
結構気楽かつ、ファンタジーっぽく外側から鑑賞できるから
いつでも観られるね