ひと昔映画日記

素人の映画雑食日記 それこそ我が映画道

ピエロの赤い鼻(2003)

泥臭いけど人間味に溢れた優しくて温かい作品

しばらくアメリカ映画を意識して観てきたけど、ここらで久しぶりに古巣にかえりたくなりますたー
ってことで、時間も短めのこのフランス映画を観ることにしたよ。

監督:ジャン・ベッケル
出演者:ジャック・ヴィユレ、 アンドレ・デュソリエ、 ブノワ・マジメル、 シュザンヌ・フロン
収録時間:95分
音声仕様:仏、日
字幕:日・吹

Story
ジャン・ベッケル監督がミシェル・カンのベストセラー小説を『クリクリのいた夏』のスタッフを結集させて映画化した感動のヒューマンドラマ。息子や家族に反対されながらも日曜ごとにピエロに扮するジャックには、戦時中の哀しい秘密があった。 (詳細はこちら

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【あらすじ】
小学校教師のジャックは休日になると道化師に扮してあちこちのイベントでピエロを演じていました。
ジャックの息子で小学生のリュシアンは不細工な格好をしてみんなの笑いものになっているそんな父の姿が大嫌いでした。
不機嫌そうな態度で父のステージを眺めていたリュシアンに、ジャックの親友で帽子屋さんのアンドレがなぜ父が道化を始めたのか?そのわけを語りはじめました。

時は遡り、第二次世界大戦末期ドイツ軍占領下のフランス。
親友のジャックとアンドレはほんとにしょうもないきっかけで突如愛国心に目覚め、レジスタンス活動に身を投じることになりました。
しかし、そのことがきっかけでとんでもないことが起こってしまうのでした・・・・

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ふとしたことがきっかけで今まで疎ましかった人を愛せるようになったり見直したりすることがある。
リュシアンとて例外ではない。
アンドレおじちゃんから、聞かされた昔話。
どうして、お父さんはピエロになったのか?
その物語が終わった時、彼は静かに涙を流した。
父の演じるステージへと戻り拍手をしながら「ブラボー」と叫んだ。
恥ずかしくて疎ましかった父のピエロ姿を初めて誇らしく思えた瞬間が微笑ましくて胸が熱くなる。
息子はずっと平凡な父の姿しか知らずにいた。
でも、自分が生まれるずっと昔に今では考えられないような冒険や危機、心優しき人との出会い、そして別れを経て今の父がそこにいる事を知る。
「知ること=理解すること」とは限らないとは思うけど、知ることで変わるものもある。
息子にしてみたら「職業教員&趣味道化」の平凡な父親の背中が急に大きく見えたことだろう。



冒頭部分を観た時、むしろこの息子の方に感情移入するくらいの気持ちがあった。
だって、旦那がピエロ(しかも中途半端なw)を趣味でやってるって、長年連れ添った奥さんなら興味失うか、悪ければうざいと感じるくらいの方が当然のような感じがしてしまって「この奥さんこんなに前向きに旦那の趣味を応援していて出来た嫁だな、おい」とか思っていたくらいだった。

でも、最後まで観ると奥さんが彼のピエロに賛同する気持ちも、息子が父を誇りに思う気持ちも理解できるのだ。
比較的短い時間の映画だけどギュッと詰まっていて濃い感じがした。
一人の心優しきドイツ兵との出会いと別れによって、ジャックの中の心の扉が一つ開いたのね。
彼に出会わなければきっと開くことの無かった扉が。
それは、彼のその後のライフワークとなり、生きる証となっていく。
その意思はきっとリュシアンにも伝わったことだろうね。
(道化まで一緒にやってくれるかはわかんないけどw)
ま、犠牲も大きかったけど、それだけに大事に大切に暖め続けて欲しいと思う。

別段号泣したりするようなことは無いけど、なんていうんだろうなぁ
胸の奥の方がじわーんと温かくなってほろっとくる感じ。


フランス映画っていうのは、結構好き嫌いがはっきり分かれたりするよね。
私はもちろん大好き派なんだけど、嫌いっていう人は暗いとかよくわかんない、小難しいなんていう理由が多いのかも知れない。
でも、この映画はそういう小難しい感じは全然なくて話はとてもわかりやすい。
なのでフランス映画を敬遠している人にも薦められる映画かな。

こういう押し付けがましくない映画は好きだ。
自分の感性をたくさん反映できる楽しさがある。

ジャックを演じるジャック・ヴィユレがいい味出してる!
やたらと景気悪そうな表情がピエロにピッタリはまってるし、その奥に慈愛を覗かせる少し悲しげな雰囲気も人間らしさがにじみ出ていてすごく良かった!
ブノワ・マジメルも正義感が強い活きの良い若者役を好演している。

総評:☆☆☆☆
物語:☆☆☆☆
演出:☆☆☆
映像:☆☆☆
音楽:☆☆☆
役者:☆☆☆☆

<ジャンル>
戦争色は薄いけど一応戦争

ヒューマンドラマ(こっちの方が強い)

<お奨めの気分>
戦争ものだし、明るい話ってわけでもないんだけど
時間的にも短めだし、話も分かりやすいので意外といつでも気軽に観られる