ひと昔映画日記

素人の映画雑食日記 それこそ我が映画道

プライベート・ライアン(1998)

収録時間:169分
レンタル開始日:2002-03-22

Story
1944年、アメリカ軍大尉に「行方不明のライアン2等兵を探し出せ」との緊急指令が下る。7人の精鋭は途中ドイツ軍の攻撃で死者が出るなどして任務への不満がくすぶり始める…。S・スピルバーグ監督が、戦争の恐ろしさを疑似体験させる衝撃的作品。 (詳細はこちら

スピルバーグは作品によって好き嫌いがはっきりわかれちゃうんだけど、太陽の帝国しかり戦争モノは結構ありだね。


冒頭から30分近い時間をたっぷり使ってノルマンディを映像化。
これはすごいね。
重々しいリアルっぷりに観てるこっちが押しつぶされそうになる。
時間的にも1戦闘シーンとしては尋常じゃない長さなので、真面目にみてると確実に飲まれそうになる。
血に染まる海、飛び散る肉片、慌ただしく混乱する様子、音も本物を録音して使っているらしく、リアリティにこだわってる感じが伝わってくる。

しかも、これを含めて2ヶ月やそこらで作ってしまったというのは正直驚く。


戦場で命を落とすか生き残るか、このシーンを見てると運以外のなにものでもなかろうという気がしてくる。
あまりに凄惨な光景。
ダメ、ゼッタイ。
戦争において兵士の命を駒などに例えることがよくあるけど、ほんとにそんな勢いで沢山の人が死んでいく。
肉の壁、肉の絨毯。
こんなに簡単にたくさん人が死ぬなんて、事故や天災じゃないわけだからね。
エライひとなんて全然偉くない。

今も内紛が起こる地域では同じようなことが起こってるんだろうかと思うとやるせない。


4兄弟のうち3人がほぼ同時期に戦死、残りの一人ライアン一等兵を本国へ連れ戻すために特別部隊が組まれる。

そういう設定に対する倫理的な問題を投げかけているのだろうけど、これは4人いる息子全員をまとめて亡くしてしまうのは残された家族があまりにも不憫であるという上層部の計らいで残りの一人を救出して国に返しましょうという特別任務なんだけど、じゃあ元から一人っ子はどうなんだっつー話になってくるわけね。
元から一人っ子は一人しかいないからしょうがない?
人の命の重さは違うのか?
などなど・・・


↓ネタバレ
結果的にこの特別任務でライアンの元にたどり着くまでに二人の兵士が命を落とす。
一人の兵士を探す為に二人の兵士が死ぬんだよ。
行く前からそんな予感はしてるよね。
エライ人が命に値段をつけた結果がこれというわけだ。
そういう美談は良いニュースになるよね、そうだよね。
凄惨な現実から目を背けさせるのには持って来いだわ。

確かに4人兄弟をまとめて失ったとしたら残された家族はほんとに不憫だよ。
しかしどうなんだよ、と思うのが素直な感想。

ミラー大尉率いる特別チームとしても、気が乗らないのは確かだっただろう。
ライアンに対して「無駄にするな」と伝えてミラー大尉は命を引き取るが、その言葉が示すとおり、不条理に思いながらも犠牲を払って守り抜いた命なわけだから。
せめてライアンには幸せになってもらわないと、わりに合わないよね。

ひと度犠牲を払った以上、もうなんていうの?そこに賭けるしかしかないみたいな。

そこいら辺の演出は工夫が感じられなくて物足りなさはあったけど及第点。
総じて面白かったし、自分が期待していた部分の映像面などはやっぱ金も、慣れもあってさすがだなぁって感じでした。


気弱な通訳兵士のアパンくんに関する伏線があって、救出大作戦の途中で見逃してあげたドイツ兵が結局ドイツ軍に復帰していて、仲間を彼に殺されてしまうんだよね。
アパンくん自身は、ドイツ兵を逃すことに積極的だったからなのかその場では見逃されるわけなんだけど、その後連合軍の援軍が到着することでドイツ軍は降伏する。
無抵抗なドイツ兵士達の中にそのドイツ兵も紛れているのを発見。
捕虜を殺すのは違反だとあれ程強く反対していたアパンだったはずなのに、結局無抵抗なそのドイツ兵を銃殺してしまう。
人の持つ高潔さや良心なんてもろいものなんだ。
特にアパンみたいに教科書通りに生きてきたみたいなタイプの人間は一度自分の信念が揺らいでしまうとあっけなく崩れ去ってしまうのだろなぁ。
きをつけよーと。
まぁ、元から教科書通り生きるタイプじゃないけど、命のやり取りとなったら流石に自分の判断の正否なんて問いただす暇も無いのかも。



とにもかくにも、この映画も戦争アンチの映画には違いないだろうし、そういう映画はたくさん出てきて欲しいよね。



総評:☆☆☆☆
物語:☆☆☆
演出:☆☆☆
映像:☆☆☆☆☆
音楽:☆☆☆☆☆(音楽っていうか音響て意味で)
役者:☆☆☆☆


<ジャンル>
戦争

<お奨めの気分>
第二次世界大戦の悲劇を動画として感じたいと思った時