ひと昔映画日記

素人の映画雑食日記 それこそ我が映画道

ココ・アヴァン・シャネル(2009)

シャネルの人の原点


個人的には、所謂そういう系のブランドには興味がないというか、拘りがない。
別にそれがよいと思って身に着ける人に対してどうこう言うつもりは毛頭ないけど

そんなわけで、ココさんがどういう人なのか良く知らない状態で拝見した。
うん。
なんか、ちょっと好きになった。
映画によってどのくらい脚色されてるのか判断できないんだけど、この映画の中での彼女は
気が強い、負けず嫌い、口も悪い、機嫌も基本的に悪くて、究極に頑固。
自分が口にしたことは絶対に曲げない。とにかくそういう頑なところが強調されているのです。


これは、幼き日の不幸な生い立ちに端を発していると思われ、病弱な母と家に寄り付かない浮気ものの父。
母が早くに亡くなった後、父は子育てを放棄して子供を施設・修道院に預けて姿をくらましてしまう。

断片的に判断しちゃうと「こいつ、かわいくねー」とか思ってしまうんだが、そういう過去があるという前提を踏まえて観ると許してしまいたい気持ちになる。

小さいころから苦労が多く親の愛情も殆ど感じることがなかったからか、ただ一人の家族である姉を除く他人に対しては
警戒心と猜疑心を解くことができない。
それ故に、誰かに依存して生きることなどまっぴらごめんというのが本音のところだが、
当時のフランスでは女性が一人立ちして仕事を持つというのは、異例中の異例。
殆どの女性(女優とか歌手とかそういう特殊な職業以外の人)は下働きで細々と暮らしていくか、金持ちに囲われるかの2択の人生というわけだ。

さて、いかにして成り上がる?
彼女は自分の本心とは裏腹に金持ちの愛人ルートを選択する。
しかしまぁ、笑っちゃったのはこの愛人時代の彼女の態度。

自ら愛人になるべく乗り込んだくせに、態度悪いこと悪いことw
ご主人様にあからさまに敵意をむき出しにするわ、まったく言いつけを守らないわ、自由にも程がある。
でも、金持ちってのは刺激を欲しているのかね。
結果的にはこういう言いなりにならない暴れん坊の方が楽しいのかしら?


シャネルのファッションに対する拘りというのは、そういうった反骨心がベースになっているらしいということが垣間見える。

当時のフランス女性はゴテゴテに着飾ったファッションが主流で華やか第一がモットー。
ココはそれがすごく嫌で、自分で服を作り始める。
周りの人と全く違うものを一人身に纏い、奇異な目でみられようが知ったこっちゃないという風。
むしろその逆かな。
どういう形であれ、人から気にかけてもらいたかった、注目されたかった。
孤独だったからこそ、反発することで存在を認めてもらいたかった。
そんな気がしちゃうよね。

だけど、ただ捻くれているだけでは、その後の成功はなかったはず。
自分で自分を信じているってうのがバシバシと伝わってくる。

新しいものを生み出す人というのは、自分自身の中に信じるものがしっかりとあるのだなと。
揺らいだりしないんだ。
このころの彼女は性格にかなり難があるように見受けられるけど、そういう堂々としてるところは素直に関心する。

語れる人ではなく動ける人でなければ、階段を上っていくことはできない。
まさしくそれを体現したような人生だ。
全てに共感できるわけじゃないけど、尊敬できるところも多大にある。


映画としては全体的にボリュームのせいなのか掘り下げがいまいちな印象があって、少し薄っぺらい気がしちゃったのが残念だったけど、
全体的にそこそこたのしめるし、自分もがんばろうって思わせてくれる部分もあって無駄な時間にはならなかったかな。

ファッションデザイナーを題材にしているだけあって映像は良かったな。
主役はあの、アメリの人で役の人柄の影響もあるんだろうけど、なんかなー
基本の表情がふて腐れている感じなので、彼女の魅力はあまり発揮されていないような、でも、まぁ無難な配役のような気もしたけど。
これは、個人的にアメリの印象が強すぎることが影響しているのだろうな。

総評:☆☆☆
物語:☆☆☆
演出:☆☆☆
映像:☆☆☆☆
音楽:☆☆☆
役者:☆☆☆

<ジャンル>
伝記に近いのかもしれないけど、ココの人生を知らないのでちょい判断が難しい

<お奨めの気分>
やらなきゃいけないことが溜まっているのに手がつけられない時