ひと昔映画日記

素人の映画雑食日記 それこそ我が映画道

アメリカを売った男(2007)

おもしろい
これは面白いね

終始地味なんだけど、それが良かった気がする。
実話を元にしているからあんまり魅せる方に偏ると逆に噓くさくなりそうだし、このくらいの地味さがリアリティを強調していてとても良かった。

FBI捜査官が10年以上に渡って他国に情報を売るスパイ活動をしていたという実際の話が元になっている。
一人の見習い捜査官の活躍でその事件が解決されるに至るのだが、その経緯を見習い捜査官側の視点に絞って描いているので、
感情移入し易く、一緒になってハラハラしながら鑑賞できるのも良かったんだと思う。

地味でも気にならない理由はそのあたりにありそうなんだけど、実際にも見習いっていうところがいいね
お粗末な部分も多分にあるんだが、見習いゆえと納得する。

良くあるスパイ映画みたいにタイムリミットと戦う感じの緊張感や華やかさはほぼない。
そういのが好きな人にしてみたら、物足りないと感じる映画だろうが、追い詰める側と追い詰められる側のじんわりと効いてくるプレッシャーや心の葛藤がかなり嵌る。

駆け引きにしても、一進一退の攻防という感じよりはお互いに値踏みながら徐々に追い詰め追い詰められる鈍痛のような感覚がなんか新鮮でよかった。
結局お互いが追い詰められていくんだよねw
でも、そうの方が合点がいくんだよ。
まともな人間なら、正義の為とわかっていたってスパイ活動をすることに心労を感じないないなんてありえないと思うもの。


そんでもって、そのスパイ役を演じたクリス・クーパーがすごかったねー
お見事でしたわ
実際は知らんけど、この映画ではスパイでしかも変態という役どころ。
10年以上もスパイを続けていて捕まっていないわけだから、完ぺき主義だったり神経質だったりするであろうことは容易に想像がつく。

そんな蛇のようにねっちこい感じと、実はチョー変態な感じがめちゃくちゃリアルで怖かったわー

登場当初は高圧的、独裁的な完璧主義者って感じで、見習い君はかなり一方的に押される。
いや、わかるよね。
事前に変態だって聞かされた上であっちが上司、しかも二人だけのセクションで自分の上司を監視しろだなんてw
その状況だけでアップアップするでしょ。
しかし、見習いとはいえやっぱFBIなのね。
絶体絶命のピンチにあんだけのハッタリと度胸。
さすがです。

そういう見習い君の頑張りも手伝って、次第に変態上司が苦悩したりプレッシャーに押し潰されたりしそうになってきて、ある種人間らしさみたいなもが露見し始める。

危険は察知していたのに、、、最後の犯行に踏み切ったのは自尊心を守るためだったのだろうか。
自分には価値がある。
危険だってわかってていも、長年のスパイ活動を否定されるような言葉を投げつけられて耐え切れなかったのかな。

罪人でも善人でも自分の居場所を探してさまよっているという部分では違いないのかもしれない。


総評:☆☆☆☆
物語:☆☆☆☆
演出:☆☆☆
映像:☆☆☆
音楽:☆☆☆
役者:☆☆☆☆

<ジャンル>
セミドキュメンタリーくらいでもいいんじゃないかな

<お奨めの気分>
うーん。難しいなぁ。
スリルっていっても、普通のスリルとは違う感じだし。