ひと昔映画日記

素人の映画雑食日記 それこそ我が映画道

ミスト(2007)

スティーヴン・キングフランク・ダラボン3度目のコンビ作。

実は全く期待してなかったんだけど、結構面白かったねぇ。

 

ある田舎町。

嵐の翌日に湖の向こうに怪しげな霧が出現する。

その様子を不審に思いながらも、買い出しの為に息子とお隣の弁護士さんを伴いスーパーへ向かうお父ちゃん。

ところが、買い物の途中で例の霧がスーパーまで押し寄せてくる。

そして、その霧の中には得体の知れない生物が。。。

という感じ。

出だしはね。

 

日本でちょっと前に屍鬼っていう作品があって、アニメ化されたけど(ていうかアニメしか観てないくらいだけれども)

展開的にはあれと近しいものを感じた。

  

 

↓ネタバレ

普通エイリアンやモンスターって聞いたら大体、VSエイリアンのサバイバルを想像するだろうと思うし、実際途中までその通りなのよね。

 

だけど、そう、要は途中で転調するの。

きっかけはオカルト宗教おばはん(マーシャ・ゲイ・ハーデン)の存在w

この人の演技はすごかったねw

危ないおばはんそのものですよ。

神だなんだとのたまっておきながら、汚い言葉を平気で吐く。

その時点で結構ヤバイ人なんだけどもね。

彼女がまるで悪魔の申し子の様に、次々に忌まわしいことを吹聴していくわけ。

極限状態になると特に人は何かにすがりたくなるもので、

それ自体が善なのか?悪なのか?というのは悲しいかな二の次だったりするのよね。

導いてくれさえすればなんだってよくなっちゃう。

究極の集団心理です。

そして起こるべくして公開処刑が始まるわけだ。

そのおばはんはそういう人間心理を利用して、もうすっかり教祖気取りですよ。

 

もうこっからは、人間のあさましさ全開。

さっきまでエイリアン相手にビクビクしてたのに、一転共食い状態ですよ。

 

そんなことをまだまともな精神を保っている主人公を通して経験しているような気になっちゃうけど実は違うの。

それが、この映画の面白いところ。

 

 

こっから超ネタバレ。

スーパーに閉じ込められた時、幼い子供を二人待たせているといって早々に一人で出て行ってしまうおばちゃんがおるのね。

で、彼女は誰か一緒に来て欲しいと懇願するのだけど、みんな応じないわけ。

自分可愛さだよね。

でもそれって、きっと自分もそうなんだろうと思うし、大多数の人が取る選択だろうと思うから、あの時応じなかった人達を悪いとは到底思えないし、あのおばちゃんもとっくに亡くなったかなんかしたんだろうと(いうより正直忘れてたって感じw、そのくらい序盤でいなくなる)思っていた。。。

 

こっからが本領なんだけど、主人公と息子とそして、数少ない考えを共有出来る人達で最後にはなんとかスーパーを脱出するんだね。

(オカルトおばはんを強制排除しますw)

そして、霧の外へ脱出しようと車で走り続けるのだが、とうとう燃料切れで止まってしまう。

 

その時、車に居たのは5人。

途中襲われてなくなった人達もいて、最終的にその人数なんだけど。

さすがに絶望するんだ。

もう、未来など無いと諦め自害することを選択する。

だが、拳銃の丸は4発しかない。

主人公は一人別の方法で自害すると宣言し、他の4人を銃殺する。

自分の息子もですよー。

 

そして、覚悟を決めて外に出る。

さぁ、来い!と息巻いてみるが、、、何も起きない

??

程なくして、霧の向こうから軍の戦車や軍人、それに道中助けられた人々が次々に現れ、それと同時に霧も晴れる。

 

ってことですね。

もう少し、決断を待っていれば助かったのだよ。

一生かけても背負いきれない後悔だろう。

一見すると彼のその最後の選択が物語の真意であるかのように見えるんだけど違うの。

 

そう、あのおばちゃんです。

子供を待たせていると泣く泣く一人で飛び出していったおばちゃんと、その子供たちが軍に保護されていたのだ。

 

つまりは、最後の選択ではなく、最初の選択が最も運命を分けたキーになる選択だったことがここに来てやっと解るわけ。

結局オカルトおばはんも、それに賛同した人達も、その人達に反発した人も、逃げ出して自害した人も、救いのために殺したのだと思っていた主人公ですらも、全てが過ちであり、己の保身を考えずに即座に勇気ある行動を取った人だけが思いを遂げているのだね。

人間の傲慢さや醜さがエイリアンの醜さ以上に際立つ、電気ショックな展開。

 

後味が悪いってことはそれだけ刺さってるってことでもあるのだから、己の傲慢さを省みる機会を作ってくれたんだと思える。

 

但し、ヘビーな事には違いなのでタイミングはそれなりに考えて観るのが良さそうだとは思う、、、 

 

選択の中で、スリリングに生還へと導かれる過程を描く作品は数多くあれど、選択の中で失敗する側の過程を描いていくというね。

稀有だけど、その分パンチあるじゃない。

 

総評:☆☆☆

物語:☆☆☆☆

演出:☆☆☆

映像:☆☆☆

音楽:☆☆☆

役者:☆☆☆☆

監督:フランク・ダラボン

 

<ジャンル>

ベースはホラーだけど、途中転調もあったりでなんか色々

 

<お奨めの気分>

 人間って群れるとこわっていうのを見て気を付けようって思いたい時