『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグロー監督が9.11テロの首謀者・ビンラディン暗殺の真実を描いたサスペンス。若きCIA分析官・マヤはビンラディン捜索チームに抜擢される。同僚を自爆テロで失った彼女は執念でターゲットに迫るが…。PG12 (詳細はこちら)
元嫁いい仕事してくれたんじゃないのでしょうか?
個人的には好きですよ、こういう泥臭くて埃っぽい感じ。
最後なんてホントに埃舞っちゃうしね。
事前調査の綿密ささながらに、気合を感じる作品だったですね。
これはエンターテイメントではないのだと、グッサリと釘を刺されます。
女性でこう言うドライで骨太な作品を作っている事自体が尊敬の対象です。
素直にかっこいいって思うよ。
映画関係者から煙たがられてもやめないで欲しい。貫いてください。ついて行きます。
勿論主観だけど、アルゴなんかよりよっぽど見る価値のある映画じゃなかろうかと思います。
だいたいコノ手の題材で視聴後感がスッキリ爽快だなんてあっちゃイカンと思うわけですよ。
どちらか一方が正義だなんてことは有り得ない。
自分たちの側が傷ついたのと同じように相手の側を傷つけているということを忘れちゃいかん。
主人公のCIA捜査官マヤがそれを体現してくれていたような気がして心を動かされるわけです。
この映画は、アメリカの捕虜に対する拷問のシーンがある事で物議をかもしたらしいけどね。
つまり、拷問があったからこそ作戦が成功したみたいな、拷問を肯定してるような内容だとかなんだとか、けどそんなん別にどっちでもいい。
(拷問が良いという意味じゃない)
この映画の中で拷問シーンがあることに対しての話しね。
もっと、違うところだから、この作品から受信するものってもっと違うところでしょ。
そうやって、一部分だけを取り上げてギャーギャーしないで欲しいの。
結論は誰もが知るところだろうから、ネタバレも何もあったもんじゃないのだが。
まず映像が凄いんだわ。
ネイビーシールズの作戦決行、ステルス機2機に分乗した精鋭部隊が潜伏先に乗り込むシーン。
臨場感が半端ない。久しぶりに鳥肌立ったね。
ゼロ・ダーク・サーティっていうくらいだから真夜中の作戦なんだけど、真夜中に危険を冒して潜入するという物々しさと緊張感が映像からバシバシ飛んできます。
治外法権なので見つかったらヤバイわけ。
終始暗澹たる重苦しい雰囲気で、淡々としていて実務的な事の運びがより一層リアリティを強調してくる。
タッチがドキュメンタリーとかに近いのかもしれない。
この辺が凄いうまいなぁって感じがしたー
ああいう場面で、妙に感傷的だったりドラマチックなシーンを挟まれたら多分それだけで緊張感台無しにするんだろう。
その抑えた質感の本物っぽさが背筋をゾクゾクさせるんだな。
音響はアカデミーでも賞を受賞したようだけど、こちらも映像に負けてない。
凡人の自分には想像もつかないようなシーンがあり、聞いたことが無い類の音が響いてくるわけで、一瞬なんなのかわからなくなるんですよ。
何?今の?何の音??何が起きたの?みたいに軽く取り残されかかるんだけど、それがまた妙にリアルっぽくてすっかりその気になっちゃうんだよね。
不満な部分もあるにはあるけど、それでも総評としちゃ満足の方が上回る。
↓ネタバレ
最後のマヤの抜け殻のような表情と涙は強烈だよねぇ。
やり遂げたんですよ。彼女は異常とも言える執着心と執念で任務を全うしたのですよ。
けど、その先に待っているものが満足や充実感とは限らないということを、彼女の表情と涙が教えてくれています。
世界平和?のためとはいえ、人を殺す事が任務だなんて、、、常人には計り知れない複雑な思いが去来するのだろうと思います。
実際、そんな仕事もちろんしたことないので理解などできようはずもないけれど、彼女がそれをちょっとだけ教えてくれたような気がします。
そして、世界平和ってなんなのよって、ちょっとでも考えてみようって思う人が増えたらこの作品はもっともっと意味のあるものになるのだろうと思いました。
総評:☆☆☆☆
物語:☆☆☆
演出:☆☆☆☆
映像:☆☆☆☆☆
音楽:☆☆☆☆
役者:☆☆☆
監督:キャスリン・ビグロー
<ジャンル>
サスペンス
<お奨めの気分>
気分に関係なく一度は観るべき、結果気に入らなくても、気に入っても、思うところはあるはずでそれにこそ意義がある。