見た目は可愛くないが子役の演技がとんでもない
ブルース・ウィリスとジョセフ・ゴードン=レヴィット主演により、時空を超えて現代と未来の自分が対峙する様を描いた新感覚SFアクション。未来から来る犯罪者を消す暗殺者“ルーパー”であるジョーの下に、「30年後の自分」の抹殺指令が入り…。 (詳細はこちら)
面白かったです。
タイムトラベルものとしての根幹的な矛盾や、疑問はたくさん抱えていますけど、演出が良いので気にならずに観られました。
特に、序盤で掟を破った同僚が拷問される場面がありますが、タイムトラベルの設定を存分に生かした演出になってまして、これはかなり「おわ!」ってなりますね。
後は後半になると一人の子供が登場するのですが(重要な役割)、この子の演技がすごいの。
ピアース・ガニォンくんっていうらしいのですが、撮影当時多分6歳くらいだと思うんですよ。
表情とか感情の高ぶりとか見事なんです。
びっくりですよ。
自分が6歳の時はただのアホだっただろうから、比較すると虚しい限りですが。。。
ライアン・ジョンソン監督はちょっと前にBRICK ブリックを観た時から、気になってました。
あれが長編デビュー作でしたからね。
なんか、この人もしかしたら来るかも・・みたいな予感がしてましたけど、結構きました。
(個人的にだけどw)
長編を今まで3本撮っていて全部自分で脚本してますもんね。
昨今の日本では売れた小説や漫画をアニメ・実写ドラマ・映画・舞台みたいにこれでもかと言うほど使い回すのをよく見かけますが、そんなハイエナみたいな事ばかりしてないで、多少綻びがあっても、こうやってオリジナルで作るっていう情熱をもっと見せて欲しいなぁとか少し思ったりもします。
(全否定するわけじゃないけど)
ブルースとジョセフのダブル主演っぽい扱いになっていますが、実際は、ジョセフくんが主演です。
こんな老けてたっけ?って思っちゃったけど、ブルースが未来の自分っていう設定なのでメイクとかで老け顔にしてるっぽいです。
格の違いがあるでしょうから、ブルース側に寄せるしかなかったのでしょうねw
若干不自然ですけどw
微笑ましいという事で。
さて、話の方は最初はギャングっぽいノリで始まりまして、所謂裏社会のアクションものとして進んで行くんですね。
ジョセフの役どころは未来から送られてきた人間を始末するという、少し変わった始末屋を生業にしています。
ブリックもそうだったですが、退廃的な匂いがします。
この監督はそういう路線が好きなのかな?
等と思いながら見てましたが、映像も哀愁が漂う少し荒れた感じで、
好きです。
硬派な感じですね、ブリックもかなりのハードボイルドでしたが、これもなかなかです。
個人的にハードボイルド、ノワールは大好きなので、だとするとこの監督は結構自分に合うかもしれないなぁなんて思います。
設定がちょっと複雑な上に色々無理があるのでこの辺は省きますが、とにかく未来の悪の組織が送り込んできた「組織にとって有害な人物」を始末するのです。
そして、こういう職業が存在している事を知っている人も未来の組織にとっては有害な人物とみなされてしまう為、当然その職についている本人達も未来では邪魔な存在になっちゃってると。
だから、未来から送られてきた将来の自分を自分で始末するんです。
その代わり未来の自分を始末すると大金がもらえるんですね。
そのことをループを閉じるって呼んでます。
自分で自分の人生を終わらせるっていうことですね。
その後は残りの30年間を遊んで暮らすんですね。
但し、未来の自分を始末しないと重罪になります。
序盤で、ジョセフの同僚がそれをやっちまうのですよね。
自分だって気がついて、逃がしちゃうんです。
最終的には組織に捕まって拷問されるんですが、ここの演出が見ものです。
拷問シーン自体は一切映らないのですが、未来から送られて来た将来の自分が拷問の最中ずっと映し出されてて、つまりその。
現在の(若い方の)同僚の指が詰められる、、、と、突如おっさんの方の同僚の指がなくなるわけです。
そうやって、どんどん体の部位が消えていくのですよ。
これは恐ろしい。
ゾクッとしますね。
で、ジョセフくんにもその時が来るんですが、未来の本人に逃げられますw
そこから奇妙な本人同士での追いかけっこが始まります。
前半はギャングアクションだったのが、後半になるとちょっと雰囲気が変わってきます。
人とは、憎しみとは?
みたいな、人生を紐解くような深い感じになっていきます。
SF設定に無理があってもOKなのはその辺りの後半への布石だからってのもありますね。
じゃないとオイオイっていうだけになっちゃうところなんだけど。
上手いこと流してます。
後、冒頭でTKっていう超能力者の存在がちょっと扱われるんです。
時は2044年。近未来ってやつですね。
モノを浮かせたりなんかできる超能力を使える人が人口の10%くらいの割合で現れるっていう設定になってまして、ほうほう、なる程そういうの出すからにはTKはキーワードになりそうだ。
と思いながら見るのですが冒頭にちょっと出てきて以降全くTKが出てこなくなります。
あの伏線はなんだったんだよ。
って思うのですが・・・
↓ネタバレ
回収されますよ。後半に。
子役くんは、実は30年後の未来の悪の組織の親玉になる子だったのです。
30年後は悪の親玉でも今はまだ小さな子供です。
けれでも、未来の本人(ブルース)は悪の組織に自分の奥さんを殺されてしまいますので、その因果を断ち切る為にもなんとしてでも、この子供を始末したいんですね。
一方で若い本人(ジョセフ)は、未来の自分を消さないと今の組織に自分が狙われますから、こちらの方は未来の自分を始末したいわけです。
そこで、ジョセフは、ブルースが将来の親玉である子供の所に来る事を予測してその家で待ち伏せするんですが、だんだんその子供と母親に情が湧いてくるのです。
最初はただ単に未来の自分を始末する事だけが目的でしたが、この親子の事も守りたいと思うようになってくるんですねー。
そんな矢先に未来の自分より先に悪の組織の方に嗅ぎつけられちゃって絶対絶命のピンチになるのですが、ここできました。
TK!
その子供が強力なTKの才能の持ち主だったのですね。
当時はせいぜいコインを浮かせる程度の能力を持つ人しか居なかったところに、もうポルターガイストみたいに家中の家具やら人まで持ち上げるとんでもない力を持っていたわけですよ。
そしてその力でいとも簡単に悪の組織からやってきた使いの人間を始末しちゃうんです。
但し、まだ子供なので力のコントロールはできていなくて感情が高ぶった時に勝手に発動しちゃうみたいな状態なんです。
(この時の演技も、ぞっとするほどですよw)
そして、ジョセフはその時初めてそのことを知りますから、この力をコントロールできるようになったら、かなり危険な人物になっちゃうじゃないか!
っていうんで、一転して子供を始末しようとするのです。
けど、その子の悲しそうな顔をみたらもう、そんな事できなくなっちゃうんですね。
親子には逃げるように言い渡して、自分は未来の自分&悪の組織と対決する為に待ち構えます。
親子の運命そして未来の自分の運命、今現在の自分の運命、どうなることやら・・。
親子にしろ未来の自分にしろ、守る為に抗っているだけで、どっちかが悪という風に割り切れるような問題じゃないのですよね。
だけどそうやって自身の利害にだけ囚われてしまったら、不幸な出来事が連なっていくだけ。
彼が決断しなければ未来はもっと荒廃する運命だったことでしょう。
憎しみの連鎖を断ち切る事で、何かが変わってくれると信じましょう。
だって、この出会いと出来事がなければきっとずっと「サラ」って呼び続ける。
そういう関係を続けていく運命だったって事だものね。
それにしても人が浮いているシーンはもうちょっと上手にというかw
中国押しなのがちょと気になったのですが、
お金出してくれる人への敬意は必要でしょうから、
監督さんがやりたい事やれてる範疇なら別に良いのでしょうけど。
そういうのが強くなり過ぎてくると、お金の匂いしかしない映画が増えちゃうのでちょっとだけにして欲しいなぁなんて。