はじけるような感動や驚きはないがじわじわくる
『ロスト・イン・トランスレーション』のソフィア・コッポラ監督が贈る、映画スターの父と思春期の娘の交流を描いたハートフルドラマ。L.A.の高級ホテルで暮らすジョニーは、ある日前妻との間に生まれた娘・クレオを預かることになり…。 (詳細はこちら)
これもまた、万人に薦められるような作品ではない。
静かで話しの動きが少ないのが苦手な人は観ていられないかもしれない。
この作品を観ると「ちょっと、ソフィア自分の事入ってない?」って思うわけですが、やっぱり小さい時の自分自身の経験から着想を得ているらしい。
ソフィアの作品も残すところ後一つとなりましたが、今まで観た中で一番ソフィアっぽさがさく裂している感じがしました。
それは、よりマニアックになってきていることの表れでもあると思います。
金獅子賞を獲っています。
毎日同じようなことをただ繰り返して時間をやり過ごしていたジョニー。
ほんとにループなんだよ。
毎日毎日、無節操に無駄遣いしまくる。
だからこそ空っぽの虚しさが際立つ。
飛び切り派手な生活なのに、一人になった途端電池の切れたおもちゃみたいになっちゃう。
それを象徴するようにポールダンスのお姉さん達は2回出てきたw
一回目は途中で爆睡しはじめる。
二回目は楽しい振りをしながら最後まで観てはいたけど、女の子の名前間違えて怒られるw
一回目と二回目で内容は違えどどちらも、どうしょうもない。
つまり、そういう事。
この男がろくでもないやつだっていうのを思い知らされる。
加えてシーンの切り替わり前に多様される長すぎる間。
ホラーだったらこの後なんか出てくるんじゃないかっていうくらい、じーーーーっと観るみたいなタイミングが多いの。
でも、結局何も起こらずに次のシーンに切り替わる。
これもそう、この作品の虚しさをこれでもかって程に強調してくる。
前の作品もそうだけど、ソフィアは雑踏の中の孤独みたいのを描くのが好きなのかな。
彼女自身がそうだったってことか。
前述通り、自分の幼少期の体験に着想を得てるっていうくらいなんだしね。
コッポラの娘という看板背負わされて生きてきたけど、実際には良いことより孤独や不安の方が大きかったんだよ。っていう訴えのような。
いわゆる二世の人にしかわからない気持ちだよね。
自分とは無縁の話なんだけど。
でも、今描いている作品達にはそういう稀有な体験が生きているのだろう。
今作も映像と音楽は安定して良いです。
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総評:☆☆☆☆
物語:☆☆☆☆
演出:☆☆☆☆
映像:☆☆☆☆
音楽:☆☆☆☆
役者:☆☆☆
<ジャンル>
ドラマ 異色ファミリー
<オススメ>
じんわりとささやかな感動をかみしめ合い時
↓ネタバレ
そんな彼の元に突然別れた妻の元にいた娘が訪ねてくる。
母親が諸事情で家をあけなければならず、参加予定のキャンプが始まるまでの間預かってくれという。
最初は困惑していたジョニーだったけど、娘と一緒の時間を過ごすうちに、この無限地獄のようなループから抜け出すカギが娘にあると気づいていくんだ。
この、徐々に娘との時間が愛おしさを増していく様がいい。
じんわりだよね。
そして、期限があるっていうのがまたいい。
キャンプに送り届けるまでの間だから、愛おしくなったばかりなのにもう別れへのカウントダウンだよーっていう。
やり方は一般人とは異なるけど、彼なりにギリギリまで娘と一緒にすごしたい、娘にも良い思い出を作ってあげたいっていう気持ちがね。
そして娘を送り届けた後、溜まりに溜まった虚しさと娘と別れた寂しさが爆発して泣きながら元嫁に電話する。
元嫁は軽くあしらうような返答しかしてこない。
ジョニーは泣いているのにこの温度差ったらないw
だけど、しょうがないかもしれないね。
今まできっと向き合ってこなかったんだろうから。
元嫁だけじゃなくて、周りにいるあらゆる人達との関係も似たようなものだったのでしょう。
「人の話を親身になって聞いてこなかった人」が、人から親身になってもらえるわけがない。
でも、最初の一歩としては上々じゃないか。