ひと昔映画日記

素人の映画雑食日記 それこそ我が映画道

オデッサ・ファイル(1974)

地味だけど秀作

終戦後およそ20年後のドイツ。
正確にはケネディ暗殺のニュースが流れるところから映画が始まるので、1963年のドイツが映画の舞台ということになる。
(但し映画そのものはイギリスの作品だったね。台詞も英語だし。)


主人公は売れないフリージャーナリスト。
水商売の彼女と同棲しているが彼女の方が稼ぎが良い為、半分ヒモのような現状。
それでも大きな山を当てて成功することを夢に組織に属せずフリーで活動を続けている。

そんな折、自殺したある老人の日記を手に入れることになる。
その老人はユダヤ人で、ナチスの強制収容所から開放された数少ない生き残りのうちの一人だった。
日記には、ユダヤ人強制収容所司令官だったロシェマン(実在)に関する犯罪の内容が記載されていた。
ロシェマンが今も生き延びている可能性を嗅ぎ取った主人公は命の危険を冒して調査を始める・・・。

映画のタイトルにもある”オデッサ”というのは敗戦後、元ナチス幹部達の逃亡を手助けする為の組織であったとされている。
こういう組織が実際にあったという事実は無いようだが、小説の中のフィクションではなく実際にそういう噂や、存在が囁かれていたらしい。


基本はフィクションサスペンスだけど、登場人物や歴史的な事件の一部は事実なので半分はノンフィクションであるといえる。
フォーサイスの小説を元に作られた映画だが、原作において元幹部の行方など、正確な事実であった部分が多く、その為に原作者フォーサイスは何度も脅迫を受けたというほどだ。


製作は74年かな?かなり古いんだけど今観ても全然いける。
サスペンスだから絵的に地味だし、俳優も華のある感じでは無いけどこういう映画だとその方が邪魔しないというケースも多く、今回も類に漏れずだった気がする。

良い意味で想像を裏切る面白さだったなー
無駄や複線の無いシンプルな構成ながら、ノンフィクションに基づいているが故の緊迫感と程よい展開の速度が、観るものを飽きさせず一気にラストまで運んでくれる。



※以降ネタばれ↓

この主人公周りからの反対や、組織からの妨害もものともせずに調査を続けるんだけど、はっきりいってかなり危険なことまでやります。
スパイとして敵組織に潜入とか、まじで死にますから。

いやね、最初はジャーナリストの血が騒いじゃってるのだろうねぇ。
なんて思いながら観始めるわけ。

でも、どんどん度が過ぎる程危険な事までやり始めるからさ、えー大丈夫?
特ダネとはいえ死んだなら意味無いだろうよーとだんだん訝ってくるんだよね。

ネタの為にそこまでやるかふつー?
なんて思えてちょっと違和感というか不自然さを覚え始めるんだわ。


物語の途中で知り合うイスラエル組織の人間達と途中から協力して潜入捜査を行うようになるんだけど、その人達とのやり取りの中で「ロシェマンは俺がやる(殺る)」とか言い出す始末でしょ。

なんだよそれ、記事にするんじゃなくて、殺しちゃうの?どうしちゃったの?
なんて思っていたら最後の最後でw
そうきたか。。。伏線一切無しだから相当面食らうけどねw

その辺の演出には賛否あるのだろうけど、私は逆に新しい感じがして面白かったなー

主人公の心情を表現したり感情移入しやすくする為に伏線はってくのってポピュラーな手段だけど、伏線無しだとこういう感じなんだなっていう新しい感覚を体験させて頂いたよ。


それにしても、今ならまだしも約40年も昔にこんなタブーな感じの映画よく作れたなw
あの頃なら当然関係者でも存命の人も多かっただろうし、すごいことじゃないでしょーか。


総評:☆☆☆(ほんとは3.5)
物語:☆☆☆☆
演出:☆☆☆☆
映像:☆☆☆
音楽:☆☆☆
役者:☆☆☆
制作年:1974


<ジャンル>
サスペンス


<お奨めの気分>
サスペンスだけど疲れないし、飽きないからちょと手軽にハラハラ・ドキドキしたい時かな