北欧アートムービーの元祖みたいなものでしょうか、映像が魅力的
監督:ヴィクトル・シェストレム
紹介No:0010
ページ:35
↑のポスターかパッケージかわからないけどデザインも素敵ですね。
残念なことに、日本版のDVDは発売もレンタルもされていないので、
無理してインポート買うよりネットで見ちゃった方がいいかなと。
あらすじを少しずつ書いていたので、拝見してから時間が経っちゃいましたが・・。
自分が観たバージョンには音楽がついていて、カリガリ博士の時と違ってなかなか合っていて良かった気がします。
(今はもう見れなくなってしまったみたい)
以下は、サイレントです
1921 - The Phantom Carriage - VICTOR SJOSTROM - Korkarlen | FULL MOVIE - YouTube
シェストレムっていう監督さん自らが主演しています。
セルマ・ラーゲルレーブという人が書いた原作が元になっていて、原作は未読ですが本書によりますとかなり原作に忠実に作られているそうです。
そしてこの映画の成功が彼の名前とスウェーデン産映画の存在を確固たるものにしたのだという事ですね。
今でも北欧の映画というとちょっと退廃的で、物静か、それこそセリフ(言葉)より表情や映像で語りかけてる印象の方が強い感じがするので、サイレントは向いているのでしょうか。
そしてなんといっても芸術的なセンスですね。
北欧の芸術センスというのはドイツのそれとは違った良さがあると感じます。
ドイツの芸術はかなり前衛的な印象を受けましたが、こちらは幻想的で少しひんやりしているような、正にホラー方面に持って来いという感じでしょうか。
幽体離脱等、所謂霊魂の世界が表現されているのですが、
二重露光で背景の現実部分に死の馬車や死んだ人の霊体の映像等を上に重ねる事によってスケスケな感じにしているんですね。
凄く手間がかかっているので作り手の気合を感じることができます。
また、本書によりますと「血も涙もない冷たい社会の中で少しずつ崩壊していく人間の尊厳」と「それによって狂気に駆り立てられ蛮行に及ぶ社会の犠牲者たち」がこの作品のテーマという事です。
5部構成になっています。
シーン毎に区切られているのですね。
<あらすじ>
第一部
救世軍のあるシスターが病気で床についています。
【聞いた事ない病名ですw
結核の一種であるのは解りますが、なんでしょうか?
=結核の中でも急速に進行するものを言うそうです】
もうかなり末期だった為、母の居る実家に帰ってきていました。
母親は静かに娘を見守っています。
もと同僚もそばで、彼女に励ましの言葉をかけています。
シスターがダヴィド・ホルムを呼んで来いと言い出します。
【誰それ?
=この時点ではわからなくて良い、関係はわからないけど男です】
同僚の女性がダヴィド探しに部屋を出ます。
けれども、ダヴィドは見つけられませんでした。
その代わりにホルム夫人を連れて戻ってきます。
【嫁がいたのか?
=いましたね、ってことは既婚の男ですね】
その間にグスタフという男性もダヴィドを探しに街に出ます。
同僚の女性は、グスタフが多分連れてきてくれるからとシスターを励まします。
そして、ホルム夫人を見たシスターは「可哀想に!」とホルム夫人に同情しています。
【この人達一体どういう関係なんでしょうかね?】
その後、同僚がホルム夫人を家に送り届けに行きます。
場面が変わって男たちが野外で酒盛りをしています。
この日はちょうど大晦日の夜だったのですね。
もうすぐ新年だからと騒いでいるのです。
そのうちの一人が他の男達に向かって話し始めます。
新年になる前にちょっと面白い話を聞かせてやろう。ってな感じですね。
彼は友人ゲラーの話をはじます。
場面は変わってゲラーを映し出します。
心理学に深い造詣を持つゲラーは大晦日の十二時に死んだ者は次の一年間死神の馬車の御者と成って死者の魂をその馬車に積み取る為に労々として働くものだと信じて居ました。
第二部
そして彼は去年の大晦日深夜の十二時に死んだらしいのだと男は飲み仲間に話しました。
場面は変わってシスターのターンです。
まだダヴィドは見つからないのかとかイライラになっています。
そしてまた場面が変わり飲んだくれのターン。
飲んだくれの所に一人の男が近づいて来て
一緒に来てくれ、ホルムさんと言っています。
シスターが危篤であなたの事呼んでるのです。だから一緒に来てくれと。
【=話しかけた男がグスタフで話しかけられたのがダヴィドですね】
ところが、グスタフを邪険にして追い払っちゃうんですが、一緒に飲んでた仲間がダヴィド責め始めます。
【どうやらダヴィドはろくでもない男のようです】
危篤なんだったら今行かないと間に合わなくなるぞ、さっさと行って来いよ。
という具合で、だんだん激しいもみ合いになります。
弾みで頭を石にぶつけたダヴィドが昏倒します。
一緒に飲んでた男たちはトンズラしてどっか行っちゃいました。
残されたダヴィドが目を覚ましました。
そして、ゆっくりと起き上がります。
ところが・・・・
【ここですねー、幽体離脱!二重露光で肉体から魂が抜け出ます】
体は自分の下に見えているんですね、状況がよく飲み込めていないダヴィド。
そこへ一人の男が現れます。
【じゃじゃん。
もうわかりますね。
ゲラー出たw
死んだはずのゲラーが出ちゃいました】
ゲラーに気づいたダヴィドですが、未だに状況がよく理解できず、その馬車で俺を病院に連れてってくれよと、ゲラーに頼んでいます。
けれどもゲラーはこの馬車には生きた人は乗せられないんだよと説明しています。
自分でももう、死んじゃってるって気づいているでしょ?
とダヴィドに向かって語りかけるゲラー。
更に、君は死んでしまった事以上に生前の悪行に直面しないといけないんだよと。
場面が変わります。
過去の警察の留置所のシーンのようです。
ダヴィドがお縄になっています。
【酔っ払って暴れたんでしょうね】
ダヴィドが警官から明日までブタ箱だからね。って言われています。
けど、その事以上にもっと辛い事があるんだよと言って、ダヴィドを別の部屋に連れて行きます。
そこには。
なんと、ダヴィドの弟が、これまたお縄になっていました。
しかもこっちは殺人だそうです。
当然重い罪に問われます。
が、警官は弟が犯罪を犯したのはあんたが原因なんだから、あんたの方が寧ろ服役するべきだと思っているよと、辛辣な言葉をダヴィドに投げかけます。
そう言われて猛烈に反省するダヴィド。
そして、生まれ変わってやり直す事を誓います。
第三部
ダヴィドが妻子の居るアパートに戻ってきました。
が、もぬけの殻になっています。
そこで、近所の人に病気で入院でもしてるのかと聞いています。
近所の住人は、全然そんな感じじゃなかったですよ~と。
更に別の近所の住人とヒソヒソ、ウフフとダヴィドをせせら笑っています。
【「あの人嫁に捨てられたのよきっと」とか言ってるんでしょうね。】
絶望するダヴィド。
今度こそ生まれ変わって、幸せにやっていこうって思ってたのに!
俺の居ない間にこそこそ逃げるようにして消えるなんて!
絶望は怒りに変わりました。
必ず見つけ出して、今の俺と同じ気持ちを味わわせてやる!
復讐に燃えるダヴィド。
そして場面はまた変わります。
一年前今いる街にダヴィドがたどり着いたところです。
ちょうど、この街の救世軍が活動を始めたばかりの時でした。
【ここでシスター登場ですね、なる程これが出会いですか】
食物はいらないから、眠らせてくれと乱暴な態度で踏み込んで行きます。
そんなやつにも優しいシスター。
快く寝床を貸してあげます。
そして、同僚(最初にベッドサイドに居た人ですね)がどんな菌が付着してるかわからないし、消毒手段も今はまだないんだからやめておけと止めるのも聞かずに、彼の脱ぎ捨てたボロボロの上着を修繕し始めるシスター。
ダヴィドは立ち上げホヤホヤの救世軍にとって最初の尋ね人でした。
【張り切っていたんでしょうね。シスター。】
夜中までかかって漸く修繕を終え、自分も寝床につきました。
翌朝。
起きてきたダヴィドを同僚の方が迎えます。
シスターはまだ寝ています。
同僚に向かってあんたが直したのか?と尋ねるダヴィド。
違いますよ~。と同僚。
なおした人を呼んでくれとダヴィド。
【お、殊勝にもお礼の気持ちでも伝えるのかしら?】
そして起きてきたシスター・・・
【え?何を!!】
なんと、この馬鹿野郎はシスターの目の前で直してくれたコートをまたボロボロに引き裂いてしまいます。
そして、皮肉っぽくこっちの方が慣れてるんでね。ってな感じですよ。
【ムキーー】
そんな大馬鹿にも相変わらず慈悲深いシスター。
次の大晦日にはまた来てください。初めての尋ね人が幸せになれるように祈ったのでそれを確かめさせて下さい。って言うんですね。
【もう、見捨てたらいいのに】
更に皮肉なダヴィドは、神への祈りが通じなかった事を証明する為にまた来てやるよと言い返します。
【もうこれ以上口を開くな、外道め】
そして、現在に場面が戻ります。
ゲラーは言います。
君のせいでシスターは死に目にあっているのですよと。
【あの汚いコートにいた菌がシスターを蝕んだって事なのだと解釈しましたが、違うかもしれない】
そして今、彼女は君が訪ねて来るのを待っているんだよと。
せっかく自分の事を思ってくれる人が居たのに、全部失っちゃいましたねと。
もう、この義務(死の馬車の御者になる事)は君が次の一年間引き継ぐ事になっているから、この運命からは逃れられないですからねと。
第四部
場面は病床のシスター。
死に際だからでしょうか、シスターにはゲラーの姿が見えているようです。
そして、彼が死のお迎えをしに来た何かだということも気づいているようです。
あなたの事は怖くないし死ぬことは構わないけどまだやり残した事があるから、時間をくださいとゲラーに頼むシスター。
大事なことをある人に伝えないと死んでも死にきれないと。
シスターの懺悔が始まります。
自分はとても恐ろしい不幸を引き起こしてしまったのだと言っていますね。
それを解決するまでは死ねないって言うんですね。
そして、禁断の告白w
待ち人の事を実は好きなんです。とか言ってますけどw
【世の中とは理不尽なものでございますねー。シスターよ。尽くすタイプにも限度があるですよ。】
ゲラーは言います。
あなたの為になるのならばそうしてあげたいところだけど、この男は貴方の善意を再三打ち砕いて来たのですよ。
場面はまた過去へ。
シスターとダヴィドが出会ったその後ですね。
酒場で飲んだくれているダヴィドと飲み仲間。
そこへ飲み仲間の嫁っぽい人登場。
旦那が働きもせず飲んだくれているので責めています。
ダヴィドと付き合うようになって堕落したのだと、ダヴィドに矛先を向けています。
仲裁に入るシスター達。
もう一人の仲間にも救世軍集会のビラを渡します。
【こんなことしてないで、集会にいらっしゃいなって事ですね】
一人取り残されるダヴィド。
場面は救世軍集会場
何故か居るダヴィド。
【冷やかしだろうか、またなんか問題を起こす気なのでは・・・】
女性ともめるダヴィドとの間に健気にもまた仲裁に入るシスター。
そして、なんでそんなに憎しみが強いのか訪ねますが、
またしても可愛くないダヴィドは心配しなくてももうすぐこの街を出ると告げます。
止めるシスター。
【この時はもう好きだったんだろうなぁ、ほっときゃいいのに】
まだ諦めないと、結構強情なシスター。
それに対してダヴィドはどうしても見つけなくてはいけない人が居る事を伝えますが、それが誰なのか?については曖昧にします。
【勿論、探してるのは逃げた嫁ですけど、そしてシスターとのやり取りの間チラチラ映ってますねw 嫁よ。ここにいたのか】
立ち去るダヴィド。
残されたシスターの元に近寄るホルム夫人。
そして、シスターに自分がさっきの男の嫁であり、彼が探しているのが恐らく自分だということを伝えます。
更に、嫁は彼との生活に耐え兼ねて捨てて逃げてきたことも話します。
前の家から遠いからここなら見つからないだろうと思ったみたいですが、そうはいかなかったワケですね。
それを聞いたシスターはあなたは彼にとっての唯一の希望なのだから直ぐに呼びに行って知らせた方が良いと進言するのですが、ためらう夫人。
空気を呼んだシスターは今すぐじゃなくてもいいと引き下がります。
そして、どのくらい時間が経過してるのかはわかりませんが、夫人が旦那に会う決心をしたのでしょう。
ダヴィドと夫人を引き合わせるシスター。
満足げです。
第五部
病気が悪化するシスター。
大晦日以来調子が悪いのだと同僚が説明しています。
【やっぱりダヴィドの衣服の菌にやられたのでしょう】
ダヴィドと出会ってシスターはどんどん不幸になっていると同僚が心配しています。
だからこそ、真実はシスターには伏せておかないといけないと。ヒソヒソ。
【ん?なんかあったんですね】
場面は再会後のホルム夫妻
あぁ、やり直すのかと思ったんですけど、またもめてますね。
夫人は子供身を案じて旦那の行いを責めています。
【この後は見ていればわかりますが、結構有名なシーン。
シャイニングっぽいヤツがでます、キューブリックはこのシーンにインスパイアされてシャイニングしたのでしょうか
迫り来る恐怖感をがっちり感じますよね、すごい】
そしてまた現在、病床のシスター。
ホルム夫妻を引き合わせた事に責任を感じて自分を責めています。
そして再び、あの夫婦がやり直すのを見届けるまでお迎えは待ってくれと懇願します。
シスターの前で改心するダヴィド。
それを見届けて召されるシスター。
シスターの住まいを後にするゲラーとダヴィド。
何故か、ホルム夫人の住まいへ向かいます。
慌てるダヴィド。
お迎えが必要な人がこの家にいるってのか?
ドキドキ。
室内。
子供共々無理心中を図ろうとしているホルム夫人。
それを悟って更にうろたえるダヴィド。
ゲラーに家族を助けてくれるように懇願しています。
けれども、ゲラーは死んだ人の魂を迎えに来ただけなので生きている人に対して自分にできる事は無いのだと説明します。
益々パニックになるダヴィドは、自分はどうなってもいいから家族だけは助けてくれと、祈ります。
その祈りが通じたのか、魂は肉体に戻り、大慌てで家に駆けつけるダヴィド。
なんとか間に合ったようです。
嫁に今度こそ良き夫・父になるとシスターと約束したのだと伝えます。
嫁は最初信じませんでしたが、泣いている彼を見て心が動いたようです。
「あなたを信じます」と一緒に涙しながら思いを伝えました。
THE END
散々悪行を重ねて死んだはずなのに改心を誓っただけで生き返る等、ご都合主義感は感じますけど、時代が時代ですので走りって事で解釈するのでOKですw
映像は特に素晴らしいです。
冒頭で記載した通り自分が拝見した動画には音楽が後付けされていましたが、それが話を盛り上げていて、海を渡る死の馬車のシーン等はほんとに気味の悪い寒々しい感じがしました。
本書には数多くの大物監督やプロデューサーに芸術的センスが引き継がれたとありますが、インスパイアされる人がたくさんいても全く不思議ではないです。
Körkarlen
監督:ヴィクトル・シェストレム
原作:セルマ・ラーゲルレーブ
脚本:ヴィクトル・シェストレム
撮影:ユリウス・イエンソン
出演:ヴィクトル・シェストレム
アストリード・ホルム
ヒルダ・ボルグストレム